自然素材の家のメンテナンス、本当に大変?
投稿日:2026年8月24日 | 読了時間:約6分(約3,300字) | カテゴリー:メンテナンス
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AIによる2人のホストの音声解説として制作しました。わたし本人の声ではありませんが、このコラムに込めた想いはそのままお届けします。通勤中や作業をしながら、どうぞ。
この記事でわかること
「メンテナンスフリー」の家が存在しない理由
木は本来、腐りにくい素材だということ
ウッドデッキなど、外部の木部の具体的な手入れ方法と持ちの年数
床(フローリング)の、日々の手入れに対する考え方
「自然素材の家は、いいものを使っているのは分かるけど、あとあと大変なんでしょう?」
相談会や打ち合わせでこう聞かれることがあります。せっかく良いものを選んだのに傷んでしまうのは嫌だ、という気持ちもよくわかります。
先に、わたしの答えをお伝えしておきます。メンテナンスフリーの家は、存在しません!
これは自然素材だから、というわけではありません。どんな家でも――ハウスメーカーの家であっても――メンテナンスは必要です。ただ、「メンテナンスが少なくて済む」という選択肢はあります。この記事では、その具体的な中身をお話ししたいと思います。
メンテナンスフリーは、ありえない
打ち合わせの中で「メンテナンスフリーにしてほしい」と言われることがあります。その度に私は「難しいです」とお伝えしています。
自然素材である以上、経年変化は避けられません。完全に手入れがいらない家、というのは存在しないのです。メンテナンスの手間を減らすことはできても、なくすことまではできません。
手間を減らしたいなら石や土などを利用した素材(瓦やタイル)や左官仕上げ、金属(ガルバリウムや銅板)仕上げを提案しています。
契約前の依頼者は、新築時にかかる費用の方に意識が向きがちです。メンテナンスにかかる費用は、後になってから「そんなにかかるの?」と驚かれることもあります。メンテナンスをしっかりと行って欲しいので、打合せの時には出来るだけメンテナンスの話もするようにしています。
よく、洋服の話に例えます。糸のほつれは、小さいうちに直せば大したことはありません。でも、気づかずに放っておくと、気がついたときには大きなほつれになって、直すのが大変になってしまいます。家も、それと同じだと思うのです。

木は、本来腐りにくい
「自然素材=弱い、傷みやすい」というイメージを持たれる方も多いのですが、これは少し誤解があります。実は、木は使う場所や使い方をしっかり考えてあれば腐りにくい素材です。
木にとって一番苦手な環境は常時濡れている状態です。水がかかるから腐るのではなく、水に濡れても乾かない状態が続く、そんな場所の木が腐るのです。昔のお風呂の壁の中の土台や柱が腐っているのは、毎日水が染み込み、乾く前にまた水が染み込むことを繰り返し、常に湿っている状態だからです。
古い民家の外部に使われている木を思い浮かべてみてください。例えば軒先や縁側、外壁の下見板といった、雨風にさらされる部分にも木は使われていますが、50年、100年と経った今でも、その多くが現役で使われています。もちろん傷んだ部分がまったくないわけではありません。傷んだ木を必要な分だけ取り替えることで家全体を長持ちさせてきました。
木の変化(経年変化)について、私はこんな風に考えています。樹木の新芽は鮮やかな緑色をしていますが、根本の幹はグレー色です。生きている木でさえ紫外線には勝てず色が変わっていきます。これは劣化ではなく木が自然に経てきた時間の証だと私は思っています。

例えば、外部の木部ではどうなの?
自然素材の中でも、一番不安に思われやすいのが、ウッドデッキなど外部に使う木部です。ここでは具体的にお話しします。
どのくらい持つのか
材料とメンテナンス次第ですが、早いと10年、長ければ15〜20年は持ちます。普通に10年以上は持つ印象です。
樹種による違いも大きく、
ヒノキ:メンテナンスをすれば15年以上
セランガンバツ(南洋材、通称アイアンウッド):ヨットのデッキ材にも使われるほど水に強く、ほったらかしでも15〜20年は持ちます
肌触りにも違いがあります。素足でウッドデッキに出たいならヒノキがお勧めです。セランガンバツは、ささくれが出やすいためサンダルが必須になります。

傷みにくくする工夫
外部に木を使うときは、昔から縦に使って水が切れるようにしています。格子も外壁も雨戸の板も縦使いが多いです。手すりなど手が触れる部分は、こまめに雑巾掛けをすると汚れも取れて長持ちします。
実際のお手入れ
以前、雨が降った後にモップで水を拭き取っているという建築主がいました。砂埃などの汚れも一緒に取れて乾きも早くなるので、デッキが長持ちするだけでなくいつでも素足で出られるような環境をつくることができるそうです。
これはかなり熱心な例ですが、多くの方は年に1回、家族で塗装をしています。作業自体は難しいものではありません。汚れがひどい場合は、洗浄して1日ほど乾かしてから塗るとより綺麗に仕上がります。
道具はホームセンターやオンラインストアで購入できます。私は基本的にご自分たちで塗装することをお勧めしています。簡単だと分かれば自分でできるからです。年配の方や時間が取れない方には工務店や塗装屋さんにお願いすることをお勧めしています。
費用は道具代であれば自分で購入しても塗装屋さんにお願いしてもさほど変わらないので、塗装屋さんに頼む場合の違いは作業代になります。家族みんなで楽しみながら作業してはいかがでしょうか。
フローリングのメンテナンス
外壁のメンテナンスは足場をかけるので費用の中でも一番かかる部分です。外壁の劣化は漏水の原因にもなるため材料を選ぶ段階で将来のメンテナンスについて一緒にご説明しています。ここでは詳しく触れませんが、また別の機会にお話しできればと思います。
ここでは内部の木、特にフローリングについてお話します。
塗装によって変わる
フローリングのメンテナンスは、塗装の種類によって異なります。私がお勧めしているのはオイル塗装です。専用のクリーナーを日常的に使えば、それで十分です。
ウレタン塗装という選択肢もありますが、塗り重ねができないという弱点があります。塗装が剥がれてしまった場合、一度塗装膜をすべて剥がしてから塗り直す必要があります。そのため私はオイル塗装をお勧めしています。材料を選ぶ段階から、その先のメンテナンスまで想定しておくことが大切です。

傷や凹みへの対処
オイル塗装の場合、汚れがひどくて取れないときは、サンドペーパーで表面を削って再塗装すれば綺麗になります。凹みや傷は気づいたときに水を含んだティッシュを一晩置いておくと、多少は戻ります。ただ、それ以上は諦めた方がよいとお伝えしています。
日々の手入れに、決まりはない
掃除機や乾拭きの頻度に、理想はありません。気がついたとき、それぞれのご家庭のペースでよいと思っています。ただ、掃除をする習慣があると、床に物が置かれなくなり、自然と片付いた状態が保たれます。
一番簡単な始め方は、椅子やテーブルなど、身の回りにある木でできた家具をメンテナンスしてみることです。木の器やまな板でも良いですね。そうやって床や壁、枠、扉など、家全体のメンテナンスにつながっていくと思います。
メンテナンスは誰に頼めばいいか
日々のお手入れは、ぜひご自分でやってみてください。道具さえあれば誰にでもできる作業です。出来不出来ではなくやってみる、それで良いと思います。
ただ、全部を自分で抱え込む必要はありません。大掛かりな作業や高い場所での作業は、無理をせず家を建ててくれた工務店さんや大工さんに気軽に相談して下さい。相談すれば皆さん親身になってくれます。
そのためにも、日々のお付き合いを大切にしてほしいです。何か困ったときに費用の安さだけで依頼先を選ぶのではなく、「あの人になら相談できる」という人間関係の中で頼れる相手を持っておく。それも家を長く大切に使っていくための、大事なメンテナンスの一つだと私は思います。

おわりに:リセットではなく、育てる
床も、外部の木部も、メンテナンスというのは「傷みを直すこと」だけではありません。日々の手入れを重ねることで、素材が持っている魅力を育てていくことだと思っています。
きれいな状態を維持するためにメンテナンスでリセットするのではなく、日々の手入れの積み重ねで、その家らしい表情に育てていく。それが、自然素材の家との付き合い方だと考えています。
チルチンびと▲木の家広場自然素材の家づくり
外壁の寿命とメンテナンスコスト
外壁の種類(木、左官、サイディング他)とメンテナンスコストの比較がまとめられています。新築時、1回目、50年間と具体的な金額が書かれています。
地域主義工務店の会にアンケートをとってまとめたものです。参考になると思います。

チルチンびと▲木の家広場自然素材の家づくり より
10年前と比較して新築時の工事費用が3割〜5割ほど高騰しています。メンテナンスについても同様に3割〜5割ほど増やした額で参考にして頂ければと思います。
関連リンク:
・木の家は100年持つ!常総の家・22年目のメンテナンス
・「神楽坂の家」ウッドデッキのメンテナンスを報告
・記憶に残る家をつくりたい わたしが、家づくりで大切にしていること
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木下治仁
一級建築士/合同会社HKA 代表
1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。



