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木造2階建ての不安と魅力・家族がつながる家を、建築家はどう設計するか

投稿日:2026年8月10日|読了時間:約8分|カテゴリー:家づくりの基礎知識


このコラムは、音声でも聴けます。
AIによる2人のホストの音声解説として制作しました。わたし本人の声ではありませんが、このコラムに込めた想いはそのままお届けします。通勤中や作業をしながら、どうぞ。


無料相談会では2階建てについてもさまざまな不安や疑問、質問を伺います。

最近は、主寝室を1階に設けたいというご要望が多くあります。そうなると、2階は子ども部屋だけになることが多く、建物としてのバランスが取りにくくなります。

耐震性についても、「平屋の方が2階建てより安全では?」「瓦屋根は耐震性が低い」「木造住宅は耐震性が低い」といったネガティブなイメージを持たれているようです。間取りに合わせた構造計画をすると耐震性は問題ありません。

将来、階段の上り下りがきつくならないか、という不安もよく聞きます。以前、「階段が登れなくなった時はもう諦めるのさ」と、潔くおっしゃった方もいました。

2階に水回りがあることへの不安、生活音のこと。今回は、こうした疑問に一つひとつ答えながら、2階建てならではの魅力についてもお話ししたいと思います。

動線の思想:リビングを通って個室へ

子ども部屋が2階にある場合、リビングを通って個室に行ってほしい。これは、家づくりを考える上で昔からよく言われることです。

マンションは、玄関から一番奥がリビング、手前が個室という間取りが多く、家族が顔を合わせずに個室に入れてしまいます。

子どもが家に帰ってきた時に顔を合わせたい。親が子どもの変化を敏感に感じたい。対話が自然とできる間取りにしたい。そんな思いからではないでしょうか。

ただ、これが全員に当てはまるわけではありません。以前、「リビングを通らずに、直接2階の子ども部屋に行ける方がいい」という方がいました。理由を伺うと、実家がリビングを通らないといけない間取りで、それが鬱陶しかったとのことでした。

世代によっても、階段の位置に対する考え方は変わってきているように感じます。親子の仲が良いのが当たり前の今の世代では、子どもの顔を見ることそのものが当たり前で、不安に思わないようです。玄関からリビングには入るけれど、最短で階段につなげてほしい、というご要望をいただくこともあります。

階段を家の真ん中に配置した方が間取りの効率が良いと考えています。小さな家では、端に階段を設けると、2階は廊下が増えてしまいます。家の中心に置けば、廊下を減らすことができます。また、階段は構造的には吹き抜けになります。建物の角は構造的に弱点になりがちなので、中心にある方が、比較すると安定します。

結果的に、階段を家の真ん中に置くと、リビングを通って2階にアクセスすることになります。すべては、家族が自然に顔を合わせるためです。

リビングに階段があると、階段に腰かけて本を読んだり、子どもの居場所として使われることもあるようです。それに2階へ声をかけやすいのも、良いところですね。


階段の不安に答える

将来、上り下りがきつくないか。緩やかに作れば、問題ありません。

梁を表すことで、天井の懐(構造のために天井裏に必要な空間)を小さくできます。結果的に、階高(1階から2階までの高さ)を低く抑えることができます。一般的な階高よりも低いので、階段の段数を1段減らすことができ、登りやすい階段になります。

蹴上を20cm以下、踏面を24cm確保する。これは、私の師匠から教えられた基準です。この基準で設計した階段は、「登りやすい」と言われることがあります。階段は一般的に「きつい」「急だ」というマイナスの評価が多いので、プラスの感想をもらえるのは、珍しいことではないでしょうか。

いざという時のために、1階に客間(個室)を設けておくと、将来足腰が弱っても対応できます。友人や両親の宿泊場所として希望されることが多いですが、年を重ねたご夫妻の場合は、最初から寝室を1階として計画しますし、介護を見据えている方は、より具体的に(客間に寝てもらう)考えていらっしゃいます。

篠ノ井の家
「いつまでも、この家で暮らしたい」というご要望から生まれた階段です。蹴上を小さくするために階高を低く設計し、踊り場を広く確保。緩やかで、登りやすい階段になりました。


水回りの疑問に答える

2階に水回り、特に浴室を設ける場合、きちんと防水処理をした上でつくります。ユニットバスであれば、防水は万全なので、不安はありません。また、1階の天井に点検口を設け、万が一のトラブルや、将来のメンテナンスにも対応できるようにしています。洗濯機にも防水パンを設けるなど、万が一に備えています。

なぜか、浴室は1階という思い込みが根強くあります。日本人が家をイメージする時の大事な一つかもしれません。もちろん、1階に浴室があれば、屋外とのつながりや、旅館のようなお風呂も実現できます。

音の問題は、トイレの位置に特に気をつけています。可能な限り、上下階の水回りを揃えます。1階トイレの上に2階トイレを配置する。うるさく感じる音は、うるさくてもしょうがない場所で吸収する、という考え方です。それに、水回りを揃えておけば、万が一水が漏れた場合にも、対処がしやすくなります。和室の上が浴室で水が漏れると、後の対応が大変なのは想像ができますよね。

浴室を2階にすると、配管が長くなったり、構造の補強が必要になったりして、コストは若干上がります。それでも、得られるメリットが大きい場合は、積極的に提案しています。もちろん、その前に嫌悪感がないかを確認し、あるようであれば無理に提案はしません。

小さな家では、1階に玄関、階段、LDK、トイレ、水回りと、必要な部屋が多くなります。水回りが2階に移るだけで、LDKは広くなります。玄関を小さく、最低限につくることも、工夫の一つです。

鷹の台の家
「浴室は寝室に近い方がいい」というご要望もあり、リビングを広く取るため、浴室を2階に計画しました。ハーフユニットバスで防水性を確保しながら、壁はタイル仕上げに。天窓からの光が差し込む、明るい浴室です。


吹き抜けと構造:2階建てならではの魅力

吹き抜けをつくる最大のメリットは、家全体を一室空間にできることです。

メリットは、温度や湿度を一定に保ちやすいこと、家族の気配を感じられること。デメリットは、どこにいても音がうるさく感じられることがある、という点です。

音の面では、断熱性能を上げることが大切です。吹き抜けを活かしたパッシブソーラーシステムを採用したり、床下エアコンを利用したりと対策をしています。

梁を表すことには、意匠としての効果もあります。自然素材の家、木の家の魅力を、意匠として伝えられる。木の香りを感じてもらえる。構造の力を感じる「力感(りきかん)」によって、安心感が得られる。この力強さは、ハウスメーカーの家との大きな違いの一つだと思っています。

主寝室を1階に、2階は子ども部屋だけ、という間取りにすると、「平屋+一部だけ2階」という、外観として不自然な形になりやすい問題があります。稲村ヶ崎の家では、吹き抜けや、あえて高い天井をつくることで、2階部分が唐突に見えないよう、外観がまとまるように計画しました。

「伸びやかな空間が気持ちいい」「声をかけるだけで子どもたちが集まる」「家族の適度な距離感が良い」といった声をいただいています。

北熊本の家
大きな屋根に包まれた、吹き抜けを介して階段がリビングと2階をつないでいます。一声かければ、2階の個室にも声が届きます。全館空調と高い断熱性能により、一室空間でありながら室温は安定している、家族の適度な距離感が生まれる住まいです


2階建てだからできること

2階リビングは、実は稀なケースです。前職では、何度か経験しました。遠くに海が見える敷地、小さな土地で庭がほとんど取れない、といった場合です。

2階リビングは、隣家への視線の配慮が必須です。せっかく開放的にできるのに、自分でプライバシーを侵害される環境をつくってしまっては、意味がありません。道路を歩く人からも見られず、隣家の庭や道路の奥行きを、自分の庭のように扱える。開放的でありながら、プライバシーが確保されたリビングになります。

風通しも、2階の方が、隣家の影響を避けられることがあります。特に、隣家が平屋だと、風通りが良いことがあります。

借景には、近景(隣家の樹木など)と、遠景(山や海など)があります。2階に上がることで、遠景が見られるようになる。花火が見えることもあります。

2階だからできることは、何より、窮屈になりがちな1階リビングを、開放的でプライバシーのある空間に変えられることだと思います。平屋のように、屋根の形を屋内に表すこともできます。

以前、「階段が登れなくなった時はもう諦めるのさ」と潔くおっしゃった方がいた、とお話ししました。でも実際には、そうならないように設計するのが、私たち設計者の役割だと思っています。


まとめ

2階建てには、2階建てなりのメリットとデメリットがあります。

家族がつながる家にしたいという私の想いは、平屋でも2階建てでも変わりません。ただ、その実現の仕方は、階段の位置、水回りの配置、吹き抜けの作り方によって、まったく違ってきます。

今回お伝えしたことが、判断材料の一つになれば嬉しいです。あとは、実際の土地や、ご家族の暮らし方に合わせて、一緒に考えていければと思います。

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木下治仁

一級建築士/合同会社HKA 代表

1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。

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