「和モダンと平屋」その2・和モダンとは? 和の空間と、その本質について
投稿日:2026年8月1日|読了時間:約6分|カテゴリー:家づくりの基礎知識
前回の記事で、「和モダンとは、新しい和風という意味ではなく、日本らしい家の再定義である」と書きました。
今回はその内容をもう少し詳しくご説明したいと思います。設計をするとき、私が何を見て何を考えているのか。建築家としての和モダンの捉え方です。
和モダンと平屋についてまとめた記事です。
▶︎ 第1弾:和モダンの平屋とは? その魅力と実例を紹介します
▶︎ 第2弾:和モダンとは? 和の空間と、その本質について(今回)
▶︎ 第3弾:和モダンの平屋で豊かに暮らす 費用について
構造を意匠として見せる
ハウスメーカーをはじめ多くの住宅では、構造材の柱や梁は表さず、壁や天井の中に隠してしまうことが一般的です。
木造住宅では、柱や梁は隠すことも見せることもできるので、どのようにコントロールするかがデザインであり、設計する上で面白いところです。
昔ながらの民家では、柱はほとんど全て現れていましたが、天井を張らずに梁を見せている場所もありました。台所や土間、茶の間など作業をする場所です。丸太を組み合わせ屋根を作っていました。見せることを目的としていないので整然としてはいませんが、素朴で、力強い空間になっています。
私は間取りと屋根の作り方を、構造計画と一緒に考えるので、梁をグリッドに合わせて合理的に架けていきます。すると、等間隔や対称に配置することになり、日本の「竿縁天井」(天井を均等な間隔で割り付ける意匠)のような、静かな秩序が生まれます。
構造を隠すのではなく、あえて見せる。しかも、行き当たりばったりに見せるのではなく、意識的に、意匠として整然と美しく見せる。私が考える和モダンの、一つの手法だと考えます。
先人の経験や知恵を現代に活かすことで、新しい意匠が生まれる。そう考えています。
格子という要素
もう一つ、大切にしている要素に、格子があります。
格子には、防犯や目隠し、日射よけといった、実用的な機能があります。同時に、和の表情を空間に添える存在でもあります。
格子は「和風すぎる」と、どちらかというと敬遠されることもあります。装飾的で、古めかしいものだと思われているのかもしれません。
最近、その魅力が見直されているように感じます。機能と美しさを兼ね備えた格子は、和モダンという言葉が持つ両面性を、そのまま体現しているように思います。
和の空間と、洋の空間
ここからが、一番ご説明したいところです。
私は、和の空間と洋の空間には、根本的な違いがあると考えています。
和の空間は、水平を強調しています。開かれていてつながりがあり、外部との連続性を持ち、明暗がくっきりとしています。そして何より、建築の構造や作り方、機能そのものが、意匠性を帯びます。
一方、洋の空間は、縦を強調します。区切られた間取りを持ち、明かりは少なめで、装飾性が過多になりがちです。閉じられた、クローズドな空間だと言えます。それは組積造という建物の作り方からの必然です。
この対比から、日本の住宅は、これまで、和の空間でありながら、洋のしつらえを取り入れてきたのではないかと考えています。
水平で、開かれていて、外とつながっている。そういう和の空間の骨格を持ちながら、内装や設備は、洋風のものを取り入れてきた。それが、私たちが「一般的な日本の住宅」だと思っているものかもしれません。
和モダンとは、その骨格に立ち返り、和の良さを再認識した暮らし方なのだと、私は思っています。
素材と建具
障子、引戸、畳、木、和紙、左官。そして、構造を表しにすること。
これらに共通しているのは、素材そのものの質感と色を、そのまま活かしているということです。
和モダンの空間は、白い空間ではありません。真っ白な壁で覆い、無機質に仕上げる空間とは、対極にあります。木は木の色を、左官は左官の質感を、和紙は和紙の柔らかさを、そのまま表します。人の手が生み出した素材の表情を、丁寧に見せていく。
それが、私が考える和モダンの、もう一つの本質です。
実例:和モダンの平屋


出水麓の家 古民家を改修した住まいです。水廻りを含め、現代の暮らしに過不足なく対応させながら、デザインを整えました。古いものを活かしていまの暮らしに合わせて再定義する。これこそが、和モダンの本質なのかもしれません。


北熊本の家 大きな吹き抜けに、力強く架かる構造の梁。障子の美しい見せ方、木の香りで満たされる空間に、北欧家具がしっくりと馴染みます。和の要素と、モダンな家具が自然に共存する住まいです。


稲村ヶ崎の家 さっぱりとした和室は、リビングの延長として、違和感なくつながっています。普段はゲストルームとして使いながら、和室らしい落ち着きもきちんと残した空間です。
まとめ
和モダンとは、日本の住まいの本質を、現代の暮らしに合わせて再定義することだと、私は考えています。
意匠として構造を見せること。格子のような、機能と美しさを兼ね備えた和の要素を大切にすること。和の空間の骨格を見直すこと。そして、素材そのものの質感を活かすことも大切です。
こうした考えを持ちながら、日々、設計をしています。
もしご興味があれば、無料相談会で、こうした思想の話も含めて、お話しできればと思います。
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木下治仁
一級建築士/合同会社HKA 代表
1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。



