スペインロマネスク巡礼|3/N バル・デ・ボイ編
三日目(2025.09.19)
バル・デ・ボイ(ボイ渓谷)
3日目は念願のバル・デ・ボイ(ボイ渓谷)の教会群へ。
10年間、本で出会った風景に惹かれ、ずっと訪れたいと思っていいた場所です。
ピレネー山脈の奥深くにあるボイ渓谷には、12世紀に作られたロマネスク様式の教会が点在しています。‘レコンキスタやスペイン内戦などの戦火を乗り越え、9つの教会が2000年に世界遺産に登録されました。

サン・クリメント聖堂(Sant Climent de taüll)
今回、9つのうち5つの教会を巡ることができました。まず最初に見学したのが、タウイにあるサン・クリメント聖堂です。山の中腹の開けた場所に立つ、3つの身廊と3つの後陣、6層の鐘楼からなる教会です。保存状態がよく教会群を代表する教会です。


屋根の小屋組は木組みで、どこか納屋のような雰囲気があります。この地方の教会はもともと農民だった修道士が建てたらしく、それがどこか不器用で素朴な雰囲気を醸し出しているのかもしれません。

デザイン(意匠)が進化する裏には、必ず技術の進化があります。ヴォールト天井ではないこと、聖堂(バシリカ)も高くないこと、開口部も小さいこと、壁が厚いこと。それぞれがロマネクス様式の特徴ですが、その後、新しい技術が持ち込まれゴシック様式へと発展していいきます。人の意識がデザインに持ち込まれず、ただひたすら手を動かして作り上げた空間がロマネスクであり、私たちが魅了されるのは必然です。親近感をもって世界中の人に受け入れられたのだと思います。
後陣に描かれていた描いたフレスコ画(全能者キリスト)は20世紀に入り保存事業が始まり、剥がして修復され、今はバルセロナのカタルーニャ美術館で展示されています。素朴なキリスト、どこか愛嬌がある姿は職人の手によるものなのでしょう。その後のバロック、ルネッサンスと続く西洋画に見慣れた私にとっては新鮮で魅力的なものでした。

カタルーニャ美術館に移されたフレスコ画
タウイのサンタ・マリア教会(Santa Maria de Taüll)

家屋に囲まれ地形に馴染んだ教会


ボイのサン・ジョアン教会(Sant Joan de Boí)


ボイ渓谷を見渡す位置に建てられています

バルエラのサン・フェリウ教会(Sant Feliu de Barruera)


6層の鐘楼は町の目印になります

側面に出入り口があります
エリル・ラ・バルのサンタ・エウラリア教会(Santa Eulàlia d'Erill-la-Vall)


人を優しく迎えるアプローチが素敵
ボイ渓谷には、世界遺産に登録されている4つの教会がありますが、車では行けなかったり、内部がゴシック様式に改修されていたりするので、見送ることになりました。
この後、「スペインの最も美しい村」の一つアインサへ向かいます。
私が尋ねてみたかった街の一つです。
旅の記録はこちらから
スペインロマネスク巡礼|3/N バル・デ・ボイ編
木下治仁
一級建築士/合同会社HKA 代表
1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。



