「設計事務所との家づくり」その2・設計契約から実施設計まで/変えられること、変えられる時期
投稿日:2026年11月3日 | 読了時間:約6分 | カテゴリー:家づくりの基礎知識
前回は、設計契約を結ぶ前の相談と基本計画のご提案までを書きました。
▶︎ 前回の記事:「設計事務所との家づくり」その1・契約までの流れ/間取りは、契約の前にどこまで決まるのか
前回の最後に、次回は工事請負契約までを書くとお伝えしましたが、長くなるため2回に分けます。
今回はその先です。設計契約を結んだあと基本設計と実施設計で何をして、何が決まっていくのか。そして「一度決めたら、あとから変えられないのでは」という不安に、段階ごとにお答えしていきます。
基本設計は、空間を一緒に確かめる時間
設計契約のあと基本設計に入ります。基本計画でご説明した内容を、より具体的に図面にしていく作業です。基本計画では不明瞭だった空調計画や構造計画の初期段階がここから加わります。
私が基本設計で一番時間をかけるのは空間(部屋同士の関係)の確認です。
間取りは理解できていても空間を理解できるか、認識できるかは建築主によって異なります。人は誰でも自分が理解していることと比べてしまいます。特に住宅は今まで暮らしてきた部屋や、実家の記憶が基準になることが多いようです。私の設計は私の考えが基準になるので、そこにずれが出ることがあります。
例えば天井のつながりです。部屋ごとに天井を考えている方が多く、隣の部屋同士(例えば洗面室とホール)の天井がつながっているのが、すぐには理解できないことがあります。
なぜつなげるのか? 狭い部屋であっても、天井がつながっていることで空間のつながりを感じて、部屋を広く感じられます。
このようなことは他の部屋でも起こります。間取り図だけでは伝えられないので、言葉やパース、模型を使ってお伝えしています。また、過去の実例写真を見てもらってイメージを共有することに時間を使っています。その中で仕上げを決めたり、家づくりのご質問にお答えしたりしています。

実施設計に入ると、打ち合わせが変わる
基本設計がまとまると実施設計に入ります。
ここからの私たちの仕事はより細かいことを決めていく作業になります。構造設計や設備設計を進めたり、器具を選んだり、詳細図を考えたり。建築主に直接かかわらない部分が増えていきます。
打ち合わせも、ご要望を伺うことから確認を取ることが多くなります。コンセントの位置、照明器具や設備器具、棚の高さや奥行きなどを、ご提案して確かめていただきます。
素材の確認、色の確認と進んで、これから工事する建物に近づいていく印象です。
実施設計期間になると、建築主からのご質問やご要望もより具体的になります。雑誌で見た、実際に見たといった事例と、設計との違いを聞かれることもあります。
実施設計に入るまでにご希望をたくさん言っていただいたほうが、早い段階で図面に落とし込めるので、変更が少なくスムーズに設計が進みます。
実施設計がまとまると工務店に見積もりをお願いします。同時に、建築確認の申請を出します。審査期間は建物の規模や構造によって異なるので、着工の時期には、余裕を見ておく必要があります。
変えられることと、変えられる時期
設計契約のあと、基本設計の間であれば、間取りを変えても設計の追加費用はかかりません。ただ変更の内容によっては、設計の時間が追加でかかることがあります。
ここからの変更は、大きな変更と、小さな変更に分かれていきます。
大きな変更
計画全体や予算、工期に影響するものです。基本計画から部屋を大きくしたい、建物全体を小さくしたいといった変更がこれにあたります。
このような規模の変更があると、基本設計が固まるまで時間がかかります。その分スケジュールが延びて、工期に影響が出てきます。

小さな変更
予算への影響が少なく、設計や工事の期間にも影響しない変更です。
本棚の棚板を増やしたい、棚に扉をつけたい、引き出しを増やしたい、といった家具の変更
照明器具や水栓を変えたい、といった器具の変更
タイルの種類を変えたい、といった仕上げの変更
コンセントを増やしたいなど
小さな変更は工事の完成まで、できるだけ対応したいと考えています。ただ工事が済んでいるところの変更は、小さなものでも費用がかかります。一度壊してから新たに作り直すからです。工事が進んでからの変更はできるだけしたくないので、「もう変更は難しいですよ」と、最終確認を取るようにしています。
私たちは変更をお断りすることはほとんどありません。ただ、変更するタイミングや費用、その影響を考えて判断していただきたいと思います。

設計監理料は、どうなるか
私たちの設計監理料は、工事請負金額(総工事費)の13〜15%です。予算が変われば増減します。
実施設計がある程度進んでから、最初からやり直すような変更になったときは、費用の負担をご相談します。設計の前提が大きく変わり、お時間もいただくことになるためです。
実際にはそこまでの変更はほとんどなく、予算が大きく変わることもないので、設計監理料の増減は少ないとお考えください。
まとめ
設計が進むにつれて、決めることは次第に細かくなっていきます。その分、変更したときの影響が大きくなります。ご希望はできるだけ早い段階で、たくさん伝えてください。
決めていただく時期の前に、その都度ご説明しながら進めています。
次回は、工務店の決め方から、工事請負契約までを書こうと思います。
家づくりの段階ごとに、何を決めるのか。具体的に知りたい方は、無料相談会でご説明します。
関連リンク:
木下治仁
一級建築士/合同会社HKA 代表
1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。



