木造住宅の耐震性 (前編)・木造住宅は本当に地震に弱いのか?
投稿日:2026年9月7日 | 読了時間:約9分 | カテゴリー:家づくりの基礎知識
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AIによる2人のホストの音声解説として制作しました。わたし本人の声ではありませんが、このコラムに込めた想いはそのままお届けします。通勤中や作業をしながら、どうぞ。
1995年、阪神・淡路大震災が起きた年、私は受験生でした。
受験のため大阪へ向かう飛行機の窓から、神戸の街を見ました。多くの家の屋根がブルーシートで覆われていました。テレビで見た被災地の光景とあわせて、あの時の記憶は今でも消えません。

上空から見た阪神・淡路大震災後の被災地、兵庫県神戸市。損壊した家屋などに屋根代わりとして張られたブルーシート(1995年3月2日撮影)。(c)AFP
大学に入ってからも、あの光景はずっと頭の片隅にありました。デザインだけでなく、構造についても、何か役立てられないか。そう考えながら勉強していました。
「木造住宅は地震に弱いのでは」
打ち合わせで、こう聞かれることがあります。今回は、その問いに、私自身の経験から答えていきたいと思います。
弱いのは、木造ではなく設計
「木造住宅は地震に弱い」というイメージを持たれている方は多いです。ですが、きちんと設計をすれば、木造が弱いということはありません。弱いのは木造そのものではなく、構造設計がなされていない建物なのです。
地震の後、実際に倒壊した建物を見ると、「これは倒壊してもしょうがないよね」と感じることが多いです。それを実感したのは、2016年の熊本地震の後、被災地に足を運んだ時でした。
仕事としてではなく、自分自身の知見を広めるために行きました。
10年前(2016年)に熊本地震で見たもの
一番被害がひどかったのは、益城町でした。
被害が集中していたのは、道路を挟んで、地盤の性質が異なるエリアでした。
そちら側では、南側に耐震壁がほとんどなかったり、筋交いを補強する金物がなかったり(法改正前の建物)、1階と2階の部屋の位置がずれていたりと、まるで教科書のような倒壊要因を抱えた建物がほとんどでした。
一方、道路を挟んだ反対側では、同じ時期に作られたと思われる建物でも、倒壊している物件は少なかったです。
耐震性がない建物であったことと、地盤の性質。この2つの要因が重なって、被害が大きくなったのだと感じました。
日本建築学会の調査では、旧耐震基準(1981年以前)の木造住宅の倒壊率は28.2%だったのに対し、新耐震基準(1981〜2000年)は8.7%、2000年基準以降はわずか2.2%だったという結果が出ています。
私が現地で肌で感じた「教科書のような倒壊」は、この数字にもそのまま表れています。
この視察は自分の設計に自信を持たせてくれました。きちんとした設計をすれば地震に対して恐れる必要はありません。逆に言えば、壊れるものには壊れるだけの理由があると思うようになりました。
積み重ねてきた耐震基準の歴史
大きな地震が起きるたびに建築学会などが被害を調査し、どこに弱点があったのかを研究し、それを法律に反映するまでには5年以上かかることもあります。その積み重ねを国や建築業界は繰り返してきました。
1923年の関東大震災の翌年には、初めて耐震の規定が法律に盛り込まれました。1950年には建築基準法が制定され、1978年の宮城県沖地震を経て1981年に耐震基準が大きく強化されました。そして1995年の阪神・淡路大震災を経て、2000年には壁のバランスや接合部の金物についての規定がさらに明確になりました。

杉山英男『木造の家は地震に強いか』講談社
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第七章 重い屋根はなぜ良くないか
第八章 どんな地盤が住宅によくないか
第九章 地震との勝負は壁
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1985年現代の木造住宅に対する多くの疑問には、すでに40年前に回答が出ています地震が起きる。被害を調べる。法律に盛り込む。また地震が起きたら、同じように調べる。この繰り返しの結果として今の耐震基準はできています。当たり前のことを無理をせず変わったことをしない。そうやって普通に構造計画を行えば、地震に対して過度に恐れる必要はありません。
保証があれば安心、ではない
地盤調査を行いそれに応じた基礎を設計する。これは今や業界全体の当たり前の話です。ただ、そこから先で私が大切にしていることがあります。構造家の意見を尊重することです。
地盤保証をつけるための条件として地盤調査会社から提案を受けることがあります。
ただその提案通りにするとかえって無駄な費用がかかるケースもありました。以前、構造家と相談しあえて別の判断をしたことがあります。保証がつくかどうかではなく、本当に安全性が確保できるかどうかを優先した結果でした。施主にきちんと説明し理解していただいたうえでその判断に至りました。
「被害が起きたら保証で直せばいい」ではなく、そもそも被害が起きないように設計する。それが前提だと思っています。
「それができるのは設計事務所だからだ」と言われることがあります。1棟1棟、時間をかけて設計し安全性を確かめる。
その積み重ねが、安心につながっています。

構造事務所と地層の変化を確認して、地盤改良工事を行う範囲を確認しています。
耐震等級3という数字との向き合い方
耐震性能を語るとき、「耐震等級3」という数字がよく話題に上ります。
耐震等級は、極めて稀に(数百年に一度程度)発生する、震度6強〜7相当の地震に対して倒壊・崩壊しないことを等級1の基準としています。
等級2はその1.25倍、等級3は1.5倍の力に耐えられることを示す指標です。
つまり、等級1・2・3のいずれも、同じ最大クラスの地震を想定した上で、どれだけの余裕を持たせるかの違いにすぎません。
制震ダンパーという選択肢もあります。
耐震性を補い、繰り返す揺れによる建物へのダメージを抑える効果があり、新築時に組み込むのであれば、費用が大きく増えるわけでもありません。
それはあくまで耐震の上に補うものであって、耐震そのものに代わるものではありません。
私は、きちんとした耐震設計そのものが基本であり、住宅においてはそれで十分だと考えています。
(免震まで求めるのは、木造の住宅には正直、過剰だと思います)
最近は、耐震等級3を標準とすることを打ち出す住宅会社が増えてきました。数字が分かりやすい指標であることは間違いありません。
私は「耐震等級3さえ満たせば安全だ」とは言い切れないと思っています。等級3は、あるモデルケースを想定してつくられた、一つの指標にすぎません。
建物の形状も、大きさも、使う材料も、つくる人も、1軒ごとにすべて違います。だからこそ、数字だけで安全性を語ることには、慎重でありたいと思っています。
私が設計する家は、耐震等級1でも地震に対して十分な安全性を確保できると考えています。構造家と一緒に1棟ごとに真剣に検討しているからです。それでも施主が耐震等級3という数字を安心材料にしたいのであれば、その基準を満たすように設計します。

図面の指示通り金物が取り付けてあるか確認します
実際、住宅はもともと、他の用途の建物と比べて壁が多くなりやすいです。無理に壁を取り払ったりしなければ、私の設計では自然と耐震等級2程度にはなるようです。
そういうことは別に、私自身、壁が多少ある方が、空間として落ち着くとも感じています。
壁があれば絵を飾ったり、棚をつくったり、家具を置いたりできます。
それも、暮らしを豊かにする一つの手段だと思っています。

まとめ
何度でも良いますが、木造住宅は地震に弱いわけではありません。
弱いのは木造の建物ではなく、設計されていない建物です。
10年前の熊本地震の被災地で、私はそれを確かめました。
そして、地震のたびに検証と法改正を重ねてきた、この国の積み重ねを知っています。
保証や等級という数字は、安心のための一つの材料にはなります。
ただ、それだけに頼るのではなく、1棟ごとに真剣に向き合うことこそが、本当の安全につながると、考えています。
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木下治仁
一級建築士/合同会社HKA 代表
1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。



