「和モダンと平屋」その3・和モダンの平屋で豊かに暮らす-費用について
投稿日:2026年8月5日|読了時間:約6分|カテゴリー:家づくりの基礎知識
前回、前々回の記事で、和モダンの平屋の魅力や、私の設計思想についてお伝えしてきました。
今回は、多くの方が一番気になっているであろう「費用」について、お伝えしたいと思います。
みなさん、率直に「いくらぐらいかかるのでしょうか」とおっしゃいます。正直、私自身も、最初の段階で正確な金額をお伝えすることはできません。これから、お客様と一緒に考えていくものだからです。
まずは想定しているご予算から実現可能な面積と仕様をお伝えしています。同様に想定している面積からおおよそのご予算をお伝えしています。その後の打ち合わせを重ねながら、概算の工事金額を、一緒に詰めていきます。
和モダンと平屋についてまとめた記事です。
▶︎ 第1弾:和モダンの平屋とは? その魅力と実例を紹介します
▶︎ 第2弾:和モダンとは? 和の空間と、その本質について
▶︎ 第3弾:和モダンの平屋で豊かに暮らす 費用について(今回)
面積のこと:28坪という目安
まずは面積の話から。
4人家族が特別なご要望なしで暮らすには、2階建てであれば30坪が一つの目安になります。平屋の場合は、そこから各階の階段(2坪ほど)を引いた、28坪が目安だと思います。
28坪は、4人家族が暮らすには十分な広さですが、ゲストルームや土間、特別な部屋(オーディオルームやサウナなど)を求めると足りなくなってきます。
ここで言う「十分」とは、LDKに加えて主寝室と個室2つ、収納、物干しなどが確保できる広さ、というイメージです。
費用のこと:実際の数字
最近の建築費高騰を踏まえると、2階建で30坪×150万円/坪で約4,500万円が現実的な一つの目安になっています。そこに外構や植栽、家具などの費用が加わってきます。
平屋は、同じ延床面積の総2階建てと比べて、屋根や基礎の面積がほぼ2倍近くになります。一方で、階段がなくなる分、床面積が2坪ほど減ります。差し引きすると、トータルでは2〜3割ほど高くなる、というのが実感です。28坪×150万円/坪×1.2で約5000万円くらいを想定してもおかしくありません。2階建と同様に外構や植栽、家具などの費用が加わります。
私は他社の坪単価との比較は、正直、あまり参考にならないと思っています。含まれる工事範囲や仕様が、会社によってそもそも違うからです。ハウスメーカーでは本体工事とは別になっている附帯工事も私たちの坪単価には含まれています。設備機器や照明器具、造作家具のようなものです。会社によっては本体工事費用(坪単価)に含まれない項目です。
私たちは工事費用とは異なる設計監理料をいただいています。詳しくは、こちらの記事でお話ししています。
▶︎ 設計事務所とハウスメーカー、結局どっちが良い?
28坪あれば十分、というのは限られた面積の中で工夫をすることで、豊かな暮らしを実現できるという意味です。それこそが設計者としての実力であり役割なのだと、私は思っています。
坪数を抑えつつ、広く感じさせる設計の工夫
限られた面積の中で、狭さを感じさせない。ここからは、そのための私なりの工夫についてお伝えします。
廊下をなくす、感じさせない設計
小さな平屋だからこそ私が意識しているのは、廊下をできるだけなくすことです。もっと言えば、廊下を廊下として感じさせない設計です。例えば洗面台を廊下に置くだけで、そこは通路から洗面所に変わります。そうやって廊下を通らずに部屋から部屋へ移動していくことで、廊下がない(廊下を感じない)設計ができます。
これは、日本家屋の間取りの基本でもあります。日本家屋は、空間を分割しながら部屋を作り、部屋から部屋へと行き来していました。廊下がそもそもなかったのです。唯一の廊下に感じる場所が縁側ですが、縁側ですら部屋の中と屋外とを繋ぐ一つの部屋のような場所でした。
つまり廊下は部屋と部屋を「つなぐ」ための、いわば西洋的な発想です。小さな家だからこそ、つなぐ設計ではなく、分割する設計に立ち返ることが大事なのだと思います。


春日井の家
大屋根が特徴の住まいです。大きなダイニングテーブルを置けるリビングに、薪ストーブ。屋根付きの濡れ縁からは、リビングとつながる和室も見渡せます。屋根の形をそのまま活かした、伸びやかな空間です。
屋根の形をそのまま活かす
平屋では、屋根の形をそのまま部屋に表すことができます。切妻屋根であれば、勾配天井をつくることができる。片流れの屋根であれば、三角形の部屋の形ができる。伸びやかで広々とした空間になり、リビングを大きく感じさせることができます。


篠ノ井アトリエ
勾配天井と大きな開口が印象的な住まいです。コンパクトな暮らしでありながら、勾配天井につつまれた空間が、実際の面積以上の広がりを感じさせてくれます。
屋外にリビングを延長する
ウッドデッキやテラス、濡れ縁をつくれば、リビングを屋外に延長することもできます。そうして、28坪という数字よりも、ずっと大きな暮らしが実現します。これも和の暮らしの再定義として、有効な方法だと思っています。


猿島の家
吹き抜けと勾配天井、檜の香りに包まれる住まいです。庭との関係を大切にし、庇のある濡れ縁を設けました。屋内と屋外が、ゆるやかにつながっています。
早い段階での合意が大切
費用も面積も、基本設計の段階で固めておくことが大切です。実施設計に入ってからでは、調整が難しくなります。何を最優先にしたいか、できれば最初の段階で一緒に考えていきましょう。そこを軸に、「諦めるもの」「取り入れるもの」を、一緒に見極めていきます。
まとめ
費用のことは、誰もが不安に思うことであり、避けては通れない項目です。私自身、最初から正確な金額をお約束することはできません。それでも、面積の目安、費用の実感、そして何より「何を大切にしたいか」を早い段階ですり合わせることで、納得のいく家づくりに近づけると考えています。
28坪という限られた面積でも、廊下をなくし、屋根の形を活かし、屋外へと空間を延長することで、数字以上に豊かな暮らしになります。
3回にわたってお話ししてきた「和モダンの平屋」について、少しでもイメージが伝わっていれば嬉しいです。
もっと詳しく知りたい、実際に相談してみたいと思っていただけたら、無料相談会でお待ちしています。
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関連リンク:
木下治仁
一級建築士/合同会社HKA 代表
1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。



