きっかけ・気づきを与えること。地域工務店での建築家勉強会
1月末、地域工務店での「建築家勉強会」講師を務めました。「設計手法」と「街並み・景観」がテーマです。参加者の熱意に感動し、「きっかけ・気づき」を与えることの大切さを実感した貴重な経験でした。
勉強会の概要
1月の末に2日間にわたって「建築家勉強会」というタイトルで、ある地域工務店に講師として伺いました。
勉強会は建築家4名による全4回(2ヶ月おきに開催)、私はその2回目を担当しました。
建築家に与えられたテーマは各自に任され、それぞれ異なるテーマから多くを学ぼうという勉強会です。
1日目スタート!

最初に私の講義が2時間ありました。
私が普段どういう設計をしているのか、どうやって設計しているのかという「設計手法」と、私が興味を持っていること、今後大事にしていきたいこと「街並み・景観」を、できるだけ具体的に言葉にして伝えました。

講義のあと、感想を聞きましたが、残念ながら伝えたいことの50%ほどしか伝わっていませんでした。ベテランの設計士には伝わったようです(言葉が足りないのと、抽象的な部分が多かったのだと反省しています)。
実は、建築家の吉田桂二さんも同じようなことを言われています。「最初に主屋を作り、そこに下屋をかける。設計は2階から。」と。

その後、計画中の実例2軒を私の設計手法で添削しました。
「私ならこうする!私はこうしない!そのように設計した理由は?もっと考えて!」あえて厳しいことも言いました。
みんなプロの設計士なので、曖昧なことを言うより、厳しいことを言われることが学びになると考えたからです。
2日目スタート!
最初に前日の講義を「自社の設計に活かすには?」ということで、参加者全員で振り返りました。一つは「設計手法」について、もう一つは「街並み・景観」についてです。
「自社の設計との違い、最近の設計の問題点、(私の)設計手法を取り入れるには難しい」など、活発な議論になりました。ここでようやく、私が伝えた設計手法が「そういうことか!」と理解できたようです。
最近の設計の問題点
私も感じていたので記しておきます。
ご予算が限られているにもかかわらず、家の仕様がどんどん良くなっています。そうすると家を小さくせざるをえません。
しかもご要望が増えています。物干し、ファミリークローゼット、玄関収納、キッチンパントリーなど。本来大事にすべき家族が集う部屋(リビングやダイニング、キッチン)が小さくなり、バックヤードの面積が増えすぎてはいないか?ということです。取捨選択をせずにご要望を全て叶えているので、家のバランスが悪いと感じています。

勉強会の感想を聞けて、泣きそうなほど嬉しかった
最後に2日間の感想を発表をしてもらいました。
・刺激的な二日間だった
・会社に所属していること(メリット)を活かしていきたい
・設計手法を意識してすぐに実践していきたい
・言葉を大切にしたい
・地域に貢献できるものを作りたい
・インプットだけでなく、アウトプットの(社内で言葉を交わす)重要性を感じた
・「諦めない」ことの大事さ
・(今後の)ヒントをもらう機会になった
(私の手元のメモが汚くてはっきりと読めません…せっかくの感想をもらったのにもったいないことをしました)
私の感想です
私自身の設計に対する考え(手法)を言葉にして伝えることは難しかったですが、とても良い経験になりました。
「設計手法」はインプット(聞くだけ)では50%しか理解できません。アウトプット(議論の場)を経ることで、90%〜100%理解できるようになりました。
漫然と聞くだけでなく、自分たちでどう活かすかという議論までがセットで、ようやく理解できるようです。
また「景観・街並み」を参加者全員15名で話し合い、過去を振り返り→課題を見つけ→次に繋げていくという、活発な意見を聞けました。そもそもまちづくりから考えるべきだという課題が明確になりました。
自分たちのことだけでなく、家をたてる地域に暮らす方の気持ちになったり、これから移り住むかたの気持ちになったりと、他者目線で話し合えたのが良かったと思います。
とにかく「変えていきたい!」という熱意を感じることができ、私も嬉しくなりました。
2日間の建築家勉強会を通じて、感じたのは、私は「きっかけ・気づき」を与えるだけで良いのかもしれないということです。皆それぞれ学んできたこと、経験したことがあります。ただ、そのことを伝え合う、話し合う場がなかっただけ。「うるさい!」と言われるぐらい活発に意見を言い合えれば、確実に成長、変化すると思います。

まとめ
2日間の建築家勉強会を通じて、「設計手法」はインプットだけでなくアウトプット(議論)で深く理解されることを実感しました。また「きっかけ・気づき」を与えることで、参加者自身が持つ経験や知識が活かされ、自主的に動くようになります。勉強会は、私にとって本業ではなく社会貢献の場だと思います。今後も地域工務店との連携を通じて、より良い住宅づくり、街並み・景観づくりに貢献していきたいです。
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木下治仁
一級建築士/合同会社HKA 代表
1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。



