田中敏溥の設計思想・田中語録その1
先日、雑誌「チルチンびと」の取材がありました。田中さんの設計を解剖してみようという試みです。
田中さんの設計はプロ(建築家や工務店の設計士)にも人気がありますが、本人が自分の設計を語る機会が少ないので、謎に包まれているようです。
取材の試み
そういえば、スタッフとして田中さんに質問するときは、図面を描いている時が多く、どうしても部分的なことが多かったです。
「簡単な方が良い」とか「普通で良いよ」とか「納まっていれば良い」とか。

今回はもっと具体的に、「この開口部の幅や高さはどうやって決めた?」など間取りの解説ではなく、部位の解説、図面の解説ができればと考えています。
毎号、住宅を一つ選び、図面を見ながら田中さんと元スタッフとで対談をしながら解き明かしていきますのでお楽しみに!

建築家からの評判
取材中、建築家から見た田中さんの評判を伺いました。田中さんの設計(ディテール)について、こんな声があるそうです。
M・Yさん:敏ちゃんはディテールが解けた空間になっている
I・Kさん:解明しようと思ったが分からなかった
F・Aさん:大体の建築家は何でこうなったかがわかるが、敏ちゃんのは分からない
田中さんの言葉
取材中、印象に残った田中さんの言葉を記録しておきます。
住宅のこと
・日常は静かで落ち着いていて安らいでいられれば良い。普段着で、目立たなくても良い。住宅は特にそうあるべきだと思っている
・日常(住宅)はことさら目立たない方が良い
全体計画(設計)のこと
・最初に周りの風景、道路からの見え方を見る。場所の特性を探っている
・(名栗川の家では)北側の風景をリビングに積極的に取り込みたかった
・構造とプランの整合性は常に考えていたように思います
・できるだけ軒桁を地面に近づけたいと思っている
・間延びをしないように、大きくならないように、できるだけ謙虚になるように努める
ディテールのこと
・色んな寸法は使わない
・綺麗に納まっていれば良い(いい加減ではない)
・掃き出しより(腰)窓の方が部屋を広く使える
施工者との関係
・お話できる大工さんだと結果的に良い家ができるね
自分のこと
・自信がないと言えば自信がない
最後に
田中さんは昔から同じことを言い続けていました。特に「普通で良い」と。
「田中さんにとって普通とは?」と質問したこともありますが明快な返答はありませんでした。
「普通」って人によって違うので、田中さんはご自分の「普通」を考え続けたのかもしれません。
あと数回この取材がありますので、田中語録を記録してみようと思います。
参考ブログ
・師・田中敏溥から受け継いだもの(続) 「普通」「掃除」「愛と勇気」
・師・田中敏溥から受け継いだもの 「仲良くする」「単純にする」、そして構造家との出会い
2016年9月10日更新
取材の内容が記事になりました。
129号「小さな水辺がある庭」

木下治仁
一級建築士/合同会社HKA 代表
1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。



