設計事務所とハウスメーカー、結局どっちが良い?
投稿日:2026年7月27日|読了時間:約9分|カテゴリー:家づくりの基礎知識
この記事でわかること
設計事務所とハウスメーカー、対比表で見るそれぞれの特徴
「安心感」「敷居の高さ」という本音の部分はどうなの?
設計事務所の費用の仕組み
「結局、自分たちはどっちを選ぶべきか」を一緒に考える視点
このコラムは、音声でも聴けます。
AIによる2人のホストの音声解説として制作しました。わたし本人の声ではありませんが、このコラムに込めた想いはそのままお届けします。通勤中や作業をしながら、どうぞ。
結論からお伝えすると、どちらが優れているということではありません。「自分たちに合う仕組みはどちらか」、その答えが少しでも見つかれば嬉しいです。
「結局、どっちがいいんですか?」
無料相談会をしていると、こう聞かれることがあります。
「結局、設計事務所とハウスメーカー、どっちがいいんでしょうか?」
違いはなんとなく分かっています。ハウスメーカーはCMでも見かけるし、大手で安心。設計事務所は夢を叶えてくれるけどちょっと不安。それくらいのイメージをみなさんお持ちです。
問題はそこから先です。分かってはいるけれど、じゃあ自分たちはどちらを選べばいいのか。それが分からずに立ち止まってしまいます。
今回は「結局どっち?」という問いに私なりに答えていきたいと思います。
まず、一番の違いだけ押さえておく
細かい話に入る前に、一つだけ押さえておいてほしいことがあります。
一番の違いは「設計と施工の関係」です。
ハウスメーカーは、設計から施工まで基本的に自社で一貫して行います。決まった仕様やプランの中から、自分たちに合うものを選んでいく仕組みです。
一方、設計事務所は設計することが業務で施工は行いません。私たちが図面を描いて、その図面をもとに工務店が見積もりをして施工を行います(施主は設計事務所と設計契約をし、工務店と工事請負契約をします)。
設計と施工が別々の会社になるので、私たちは施主の立場に立って第三者の目で工事をチェックする役割も担います。
この違いが、これから見ていく全ての項目に関わってきます。「自分たちはどっちだろう」と考えながら読み進めてもらうと分かりやすいです。
あなたはどっちに近い?対比表で考えてみる
仕組み:決まった型か、自由な設計か
ハウスメーカー | 設計事務所 |
|---|---|
設計と施工が一体 | 設計と施工が分かれる |
型式・規格 | 自由設計 |
できること・できないことが決まっている | 決まっていない、何でも相談できる |
「決まった型の中から選びたいですか?それとも、白紙から一緒に考えたいですか?」
まずはこの問いに答えてみてください。迷いなく決めたい人はハウスメーカー向き。時間がかかっても、自分たちだけの家を建てたい人は設計事務所が向いています。
デザイン・素材:選ぶか、一緒に考えるか
ハウスメーカー | 設計事務所 |
|---|---|
一般的 | 個性的 |
新建材が中心 | 自然素材も選べる |
仕上げや間取りを「選ぶ」 | 「一緒に考える」 |
カタログや自社の仕様の中から決める安心感か、木や漆喰といった自然素材、こんな材料も?と、一つひとつ吟味していく時間か。どちらが楽しそうと感じますか?
品質・体制:安定か、個性か
ハウスメーカー | 設計事務所 |
|---|---|
安定した高品質 | 建築家・職人の力量による差 |
大手 | 個人 |
ハウスメーカーは工場生産と標準化された仕組みで、誰が担当しても一定の品質が保たれます。設計事務所は、担当する建築家や職人の力量によって、仕上がりに差が出ることも事実です。だからこそ私たちは、信頼できる職人さんたちとチームを組み、一つひとつの現場に丁寧に向き合うようにしています。
「安心」と「不安」、あなたの本音はどちらですか?
ここが、今回一番一緒に考えたいところです。
ハウスメーカー | 設計事務所 |
|---|---|
安心感がある | 不安を感じやすい |
相談しやすい | 敷居が高く感じる |
営業担当者がいる | 営業担当者がいない |
モデルハウスがある | ない(実例で確認) |
お任せ型 | 一緒に関わる型 |
「ハウスメーカーのほうが安心、大手で信頼できる」
そう感じているとしたらそれは正しい認識です。
大手には営業の担当者がいて、モデルハウスがあって、いつでも相談できる窓口があります。一方、設計事務所は基本的に個人、もしくは小さなチームです。看板の大きさで言えば、心もとなく感じて当然だと思います。大切な家を会ったばかりの個人の建築家に託す。それはとても勇気がいることです。
私はこの不安を「大丈夫です、心配いりません」と打ち消すつもりはありません。まず、その気持ちを分かった上でお話ししたいです。
では私たち設計事務所が、この不安にどう応えているのでしょうか。
まず、設計事務所には「第三者としてチェックする」という役割があります。工事が図面通りに進んでいるか、手を抜かれていないか。施主の代わりになって現場に立ち会い確認をする。これはハウスメーカーの自社完結の仕組みにはない、設計事務所ならではの安心の形です。
また、私たちの設計の不具合に備えた瑕疵保険に加入する保証の制度も整っています。「個人だから何かあっても心配」ということがないように業界全体でサポートしています。一方で工務店の工事の不具合については、依頼する工務店が瑕疵担保の保険に加入していますので責任を持って対応します。
そして何より、費用を開示すること。次の章でお話ししますが私たちは設計監理料をはっきりと公開しています。見えないところで不安にさせるのではなく、見えるようにすることで、安心につなげたいと考えています。
営業担当者もモデルハウスもありませんが、その代わり、私たち自身が最初の打ち合わせから設計、現場監理、お引き渡しまで、最後まで担当します。無料相談会は、そのための最初の場所です。
大手のような「仕組みの安心」はありませんが、顔の見える「関係の安心」を、時間をかけてつくっていくことができます。あなたが今どちらの安心を求めているか、それも「どっちを選ぶか」の大事な手がかりになると思います。
こんな人はハウスメーカーが向いています
あなたが次のどれかに当てはまるなら、ハウスメーカーの方が向いていると思います。
早く、確実に住まいを完成させたい
総額をできるだけ早い段階で知りたい(確定させたい)
展示場で実物を見て、納得してから決めたい
標準仕様のプランで十分満足できる
大手という安心感が欲しい
全てお任せしたい
これは決して悪いことではありません。むしろ、多くの人にとって合理的な選択です。家づくりに時間をかけられない事情がある人、決められたものの中から選ぶ方が安心できる人にとって、ハウスメーカーの仕組みはとても心強いものだと思います。
こんな人は設計事務所が向いています
一方で、あなたが次のどれかに当てはまるなら、設計事務所が向いていると私は思います。
土地の形が複雑だったり、条件が特殊だったりする(ハウスメーカーより得意)
木や漆喰など、自然素材にこだわりたい
既製のプランでは実現できない、暮らしのイメージがある
職人さんたちと家づくりをしたい
ハウスメーカーに満足できない
私たちの仕事は、決まった型に家族の暮らしを当てはめることではありません。土地の特性を読み取り、家族の暮らし方、大切にしたい素材など、一つひとつに向き合いながらその家族だけの暮らしを一緒に考えていく。それが設計事務所という仕組みの本質だと思っています。
私の仕事は「暮らしを一緒にデザインすること」とお伝えしています。
費用のことをお話します
「結局どっちがいいの?」を考える上で、費用は避けて通れません。
私たちは、設計監理料として、総工事費の13〜15%をいただいています。この数字はウェブサイトにも明記しています。
「設計事務所は高い」とよく言われますが、この設計監理料には何が含まれているのかあまり知られていません。
含まれているのは、単に図面を描く作業だけではなく、土地の調査、法規のチェック、幾度にもわたる打ち合わせとプランの調整、素材や仕様の検討、工務店との費用調整、そして工事が始まってからの現場監理。設計から引き渡し、その後のメンテナンスまで、長期にわたって関わり続けるための対価です。
設計は私たちだけでなく外部の協力事務所と一緒に行います。構造設計事務所とは耐震性を確かめたり、RC造(鉄筋コンクリート造)になると構造計算などが必要になります。設備設計事務所とは省エネルギーで快適に暮らす方法や、給排水設備や冷暖房設備などを一緒に考えます。外部に支払う費用も含まれています。
また、家具を一緒に選んだり、外構・植栽も一緒に打ち合わせをすることもあります。つまり、家づくりを考え始めた時から、完成して暮らし始めて落ち着くまで、長いお付き合いを責任もって関わらせていただきます。
ハウスメーカーの場合、この設計や監理にかかる費用は、工事費の中に組み込まれていて見えにくくなっていることが多いです。設計事務所の場合は、それを独立した費用として明示している、という違いだと理解していただけたらと思います。
また設計事務所の場合、特定の工務店に縛られず、複数の工務店から見積もりを取ることが一般的です。同じ設計図面でも工務店によって工事費は変わるため、比較検討することで、工事費を適正な水準に近づけていくことができます。
私たちの場合は、信頼している工務店に絞ってお願いする「特命」という形を基本にしています。早い段階から一つの工務店に相談しながら設計をすすめることで、精度の高い金額に近づけていくことができ、難しい施工も事前に解決ができるので現場でのトラブルが少なくなります。結果的に施主にとっても良い進め方だと考えています。相見積もりが向いている場合、特命が向いている場合、どちらもありますので、進め方については遠慮なくご相談ください。
最後にデメリットもお伝えします。設計事務所の家づくりは、工務店との契約までは総額が固まりにくいことが多いです。土地の条件や仕様の検討を重ねながら金額を詰めていくため、最初の段階で総額を確約することが難しいのです。この点は、ハウスメーカーと比べて不安に感じるかもしれません。だからこそ、私たちは早い段階から、概算の目安をお伝えするよう心がけています。
それでも迷っているあなたへ
なんとなく「自分はこっちかな」と見えてきた方もいれば、まだ迷っている方もいると思います。それで大丈夫です。
最後に、判断の軸を整理しておきます。
1. 時間をかけられるか
じっくり考えながら進めたいのか、できるだけ早く暮らし始めたいのか。
2. 「決まったものから選ぶ」か「一緒につくる」か
安心できる型の中から選びたいのか、自分たちだけの暮らしを一から考えたいのか。
3. 費用の見え方に何を求めるか
最初に総額を知りたい(決めたい)のか、対話を重ねながら納得して決めていきたいのか。
4. 「仕組みの安心」を求めるか、「関係の安心」を育てたいか
大手の看板やモデルハウスに支えられる安心を求めるのか、それとも、顔の見える相手と時間をかけて信頼関係を築いていきたいのか。
この4つを考えてみると、きっと、自分に合う方が見えてくるはずです。
まとめ:迷ったら、話してみてください
「結局どっちがいいの?」という問いに、私なりに答えてきたつもりです。
でも本当のところ、この記事だけで答えが完全に出る人は少ないと思います。「安心感がある」「相談しやすい」というハウスメーカーの良さも、「不安を感じやすい」「敷居が高い」という設計事務所の弱さも、どちらも本当のことだからです。
それでいいと、私は思っています。
もし「自分たちの場合はどっちなんだろう」と、まだ迷っているなら、一度、話してみるのが一番だと思います。
私たちは、土地がまだ決まっていない段階でも、費用について漠然とした疑問がある段階でも、無料相談会で率直にお答えしています。「そもそも我が家は設計事務所に向いているのか」というご相談も、大歓迎です。
答えを持って来なくて大丈夫です。迷ったまま、来てください。
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木下治仁
一級建築士/合同会社HKA 代表
1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。



