東京造形大学での講義──建築は対話によって生まれる
カテゴリー:講義、教育、建築実務、対話
東京造形大学2年生に講義をしてきました。
テーマは「私の設計手法について」と「建築士として大事にしていること」。建築を志す学生の学びに、何か役に立てばと思います。
今回は、大工の高さんとアートディレクターの吉本さんと3人で担当しました。それぞれスライドを見てもらいながら、普段の仕事について話しました。
対話から生まれる建築
私の設計手法の核にあるのは「対話」です。
施主の言葉を聞き、職人の知恵や知識を引き出し、素材の力を探る。私一人の自己満足ではなく、関わる全員の経験、仕事が引き出される場をつくる。それが良い建築への道だと考えています。
今回、高さんと吉本さんと3人で講義をしたのは、構造設計者の吉野さんからのお誘いです。吉野さんが担当する構造力学の授業の一環で、講義だけでなく実務に携わる方々の普段の仕事を聞くことが大切だという考えからです。
建築は一人では作れません。建築主の想い、設計者の考え、大工さんの技術、時にはアートディレクターの総合プロデュースなど、多くの関係者が関わって初めて完成します。
学生たちが複数の視点から「建築とは何か」「自分はどの立場で関わるのか」を考える機会になればと思いました。
職人技術に触れる
高さんからは、職人としての技や面白さ、成長について話がありました。状況に応じて木の特性を見極め、職人の技を楽しむこと。それが職人の基本だと思います。
いすか継という高い技術が必要な継手を、実物を持ってきてもらって説明していただきました。学生たちも興味津々で、私自身、いろいろ質問したいくらいでした。
職人の技術は単なる技能ではなく、文化です。日本の木の文化と技術を、次の世代へつなぐ。その担い手として職人がいて、その想いを理解する設計者がいて、初めて良い建築が生まれるのです。
学生たちにとって、職人さんの仕事を直接聞くことは、またとない学びになったはずです。
建築と商品開発の共通点
吉本さんからは、建築と商品開発の共通点を伺いました。
ものづくりをしていても、本当に伝えたいことは消費者に伝わるとは限りません。どうやって伝えるのか、どうやってファンを増やしていくのか。商品のコンセプトから仕組みづくり、この先の展開まで考えて、一つ一つ整えていきます。
特に印象的だったのは、仕事の8割が対話で、手を動かして形にしていく時間は2割だということです。対話の中で、人や商品が持つ本当の魅力を探り、見つけているそうです。私が大切にしていることと同じですね。
学生への想い
学生たちの興味はそれぞれ異なります。同じ講義を聞いても、心に響くポイントは違う。それで良いと思っています(退屈そうな?学生もいましたね、笑)。
大切なのは「興味をもつこと」です。楽しそうな発表、面白そうな仕事の話を聞くことで、急に興味が生まれるかもしれません。
私が建築士として大事にしていることは、ただ設計図を引くことではありません。施主、職人、スタッフ、全ての人が積極的に関わり、責任と誇りを持って仕事をしてもらいたいです。その場を作るのが私だと思っています。
私たち3人の実務家が楽しそうに自分たちの仕事を語る姿勢は、学生の心に届いたと思います。
良い建築、良い住宅は対話から生まれます。今回の講義が、これからの学びに役立てば大変嬉しいです。
木下治仁
一級建築士/合同会社HKA 代表
1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。



