日常に潜むデザイナーの重要性・暮らしをデザインするということ
日常に潜むデザイナーの重要性
先日、運動器具の営業の方が事務所にお見えになりました。
イタリアンブランド「TechnoGym」のトレッドミルなどの運動器具の紹介です。デザインシリーズの一つがイタリア人デザイナーのアントニオ・チッテリオということに興味を引かれました。私が好きなデザイナーの一人です。

TechnoGymはミラノ五輪の選手村のトレーニング施設にも置かれたそうです。プロ選手が選ぶだけの性能と品質を備えながら、イタリアンデザインらしい優雅さ、洗練さを兼ね備えているようです。
今回は日常の暮らしに潜むデザイナーの重要性について考えてみました。
デザインの価値
私たちが日常で目にするプロダクトの多くは、残念なことに「低価格、高機能」を求められます。
コストダウンが優先され、デザインは削られることが多いです。ただ、デザインなしにはプロダクトは作られないので、コストダウンのためのデザインをしているということになるのでしょう。
アントニオ・チッテリオのような一ザイナーは、機能性と美しさを両立させます。家具や照明、収納家具、キッチン、食器まで、暮らしに関係する多くのプロダクトをデザインしています。
トレーニング機器も同じです。プロの選手が選ぶだけの性能と品質を備えながら細部にまでこだわる。それは「高価格、高品質」だからこそできることかもしれません。
空間を彩る家具
私は普段、スポーツジムのトレッドミルで走っています。(なんで屋外で走らない?とよく言われますが…)ジムの器具は機能的であり、全て黒で統一されているので空間デザインがなされていますが、住宅目線で見るとインテリアとしては「いまいち」。
無機質であるために空間に彩りを加えることもありません。
一方、チッテリオデザインの器具はどうか。造形的であり、その存在が空間を高めます。それは家具選びに似ています。
「屋調一如(家と家具は一体のもの)」は、田中さんの造語です。「庭屋一如(庭と家は一体のもの)」とよく言われるように、お互いに高めあうもので、どちらが良いではなく両方とも大事、という考え方です。
家具や家電、食器、観葉植物など家を彩るものには、家族の普段の暮らしが現れます。ひょっとすると、これまでの暮らしの歩みが、形になっているようです。
建築家の役割
私たちは家族の暮らしを形にすることを仕事としています。つまり暮らしをデザインしています。
空間を彩る家具によって、より良い空間へ昇華することもあれば、その逆もあります。家具の選択は設計の一部とも言えます。押し付けがましいと言われることもありますが、決して後付けにすることなく、空間と一体で選んでみてはいかがでしょうか。

北熊本の家(設計:木下治仁)
日常の暮らしにはデザイナーがひっそりと関わっています。デザイナーが関わっていないものはないでしょう。デザインが暮らしをよくするためのものなのか、コストを下げるためのものなのか、機能を優先するものなのか。
バランスがとれたものこそ、多くの人の手に伝わって長い間使われ続ける良いデザインなのかもしれません。
そんな家を目指して設計をしています。
最近の傾向

最近のインテリアの傾向として、自然志向があるように思います。色も柔らかい暖色系というのでしょうか。木を使った建築、インテリア、家具が増えているように感じます。
TecnoGym にもそんな傾向に合わせてサンドカラーの器具があるそうです。黒っぽいイメージではなく、女性にも好まれる感じだそうです。
木下治仁
一級建築士/合同会社HKA 代表
1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。



