お問い合わせ

無料相談会のご案内

長く設計に携わることで分かること──住宅という仕事

私が田中敏溥建築設計事務所に勤め始めたのが2003年です。

今でも担当した住宅や、お付き合いが続いている住宅に伺うことがあります。多くはメンテナンスの機会です。設計時には想定していなかったトラブルの原因や解決方法などを学ぶ良い機会になります。

また、担当していた時には考えもしなかった家族の変化や、住まい方の工夫を知ることができます。こうした経験を、今後の設計に活かしていきたいです。

2月末続けて3軒の住宅を訪ねる機会がありましたので、まとめてご紹介します。

1/田園調布の家-20年目の二世帯住宅

二世帯住宅として設計しました。南北に細長い敷地、長いアプローチを通り玄関へ向かいます。

世代交代に伴い、お孫さんご家族が一時的にお住まいになると言うことでメンテナンスで伺いました。

メンテナンスの内容

室内を清掃し、汚れていた床や家具を再塗装しました。また建具の動きを良くしたり(戸車を交換)、障子紙を貼り替えたり、畳面を張り替えたりしました。

手入れを終えた室内は、時間を経た落ち着きのある室内になりました。

20年の時を経て

完成して20年が経ち、お子様は成長し、独立し、結婚し、新しい家族を迎えました。

二世帯住宅の中でも暮らしがきちんと分けられていたので、親世帯ともお互いに遠慮することなく、程よい距離感で暮らすことができます。

2階の寝室

設計する時に、時間の経過を想定しますが、今回のようにリアルに対面する機会があるとは思いもしませんでした。今後、二世帯住宅を設計する際に、今回の経験が活かせると思います。

長いこと設計に携わらないと経験できませんね。

田園調布の家
竣工:2006年 
所在:東京都世田谷区
設計:田中敏溥建築設計事務所
施工:松栄企画

2/新井の家-ゲストが多い家

住宅密集地に建つ住宅です。

今回は建具の調整とピクチャーレールの取り付けで伺いました。写真家の作品を多くお持ちの建築主、季節や来客に合わせて掛け替えているそうです。

L型の開口、コーナーの柱を取れませんか?と押し問答しました

フォーマルダイニングのブルー照明

新井の家には、ゲストを迎えるフォーマルダイニングがあります。お土産にいただいたお酒を飾る棚を設けています。

棚にはブルーの照明を仕込んであります。建築当時はLED照明が出始めの頃、綺麗なブルーの照明を探すのに苦労しました。悩んだ結果たどり着いたのは、熱帯魚の水槽に使う照明。夜になると熱帯の海の青色で照らされます。

和室の囲炉裏

囲炉裏がある和室がリビングの隣にあります。意匠をシンプルにまとめ、襖紙を金色にすることで、落ち着きと華やかさが混在する空間になっています。

海外からお見えになるお客様も多く、和室でのもてなしは、みなさん喜ばれているそうです。

畳の芯は藁床、グレーの縁は麻の生地を選んでいます

浴室

北側にある有効利用が難しい旗竿部分の土地は浴室の庭として整えています

建築主からの言葉

メンテナンスの後、昼食を近所の蕎麦屋さんでご一緒しました。

「私は人(生き方)もアートだと思うのです」

この言葉を聞いて、ふと思いました。設計とは家族それぞれの暮らし方というアートを支える場(住宅)を作っているのかもしれない、と。家族が生き生きと暮らせる空間(住宅)を設計することで、その家族の「生き方」に貢献しているのだと感じました。

新井の家
竣工:2012年 
所在:東京都中野区
設計:田中敏溥建築設計事務所
施工:リフォームラボ

3/神宮の家-移築されたモデルハウス

総合展示場に建つ、地域工務店のエコ建築考房モデルハウスとして設計しました。

ところが竣工して3年、急遽、総合展示場が閉鎖することになりました。モデルハウスは一般的に流行り(消費)を生み出す商品として建てられます。そのため、全ての住宅会社が当然のように取り壊しを選択する中、唯一!移築されることになりました。

エコ建築考房が目指す家づくりは、地球にも優しいいえ作づくり。無謀とも思えるチャレンジを経て、見事、自社の理念を形にすることができました。

エコ建築考房のウェブサイトから

モデルハウス「くほんの家」は、2016年6月から2019年7月まで旧神宮東中日ハウジングセンターに建っていました。(旧神宮の家)

完成から3年、残念ながらハウジングセンターの閉鎖が決まりました。
閉鎖に伴い解体を余儀なくされた数十棟ものモデルハウス。
まわりが廃墟のように雑多に壊される中、エコ建築考房が考えたのは
「我々のつくる家は、数世代にわたって住み続けられる家。たとえ壊すとしても解体後のゴミが少なく再利用が可能なものがたくさんある。」
ということでした。それは、自然素材だからこそできること。
人の手で丁寧に緻密につくられ、日本の誇る強い木材を使った素晴らしい家をなんとか残したい!と考え、“移築”する選択をしました。

解体した材料は名古屋から一宮に運ばれ、手直しをしながら再建築し、移築されました。

神宮の家は田中事務所が設計した住宅の中で、唯一移築された家です。移築の話を聞いた時は「本気?」と驚いたことを覚えています。

移築に際して、敷地に合わせて一部(玄関と室内物干し)設計変更されていますが、そのほかは竣工時の雰囲気がそのまま残っています。

今回の訪問

神宮の家には、今回、URAの設計塾で伺いました。設計塾は地域工務店の設計者(初心者)向けに始めて今年で6年目になります。一つの課題に対して塾生それぞれの案が出てくるので、添削する講師にとっても勉強になります。「なるほど、そう言う考えもあるのか!」と。

設計塾のあとは楽しみの懇親会です。

・来年の設計塾はどうする?
・設計していていま何が問題?
・もっと街並みを意識した設計をして欲しい!

設計塾のこと、設計のこと、家づくりのことなど、みんなで楽しく話しました。

神宮の家
竣工:2016年 
所在:愛知県名古屋市→愛知県一宮市
設計:田中敏溥建築設計事務所
施工:エコ建築考房

まとめ

メンテナンスの機会でお伺いして、その後の暮らしの様子を見られるのは嬉しいことですし勉強になります。

設計塾では若い設計士の方が多く、中にはまだ実務に携わっていない(修行中!)方もいます。講師として課題案を良い悪いだけでなく、住宅の時間の経過も合わせた講義・添削をしていきたいと考えています。

長く設計に携わることで、ようやく分かることがあります。それが、この仕事の難しいところで、面白いところだと感じています。

木下治仁

一級建築士/合同会社HKA 代表

1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。

10:00〜18:00(定休日:日・祝)

☎︎ 03-3320-5854

メールからのお問合せ

お問い合わせ

無料相談会について

無料相談会
keyboard_arrow_up