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街に溜まる澱(おり)の魅力──新宿ゴールデン街から考える

最近は外国人観光客で賑わう新宿の飲み屋街、新宿ゴールデン街。本当に小さな飲み屋(バー)がひしめき合っています。

お店は新陳代謝を繰り返しながらも、昭和の頃から変わらぬ姿があります。決して綺麗とは言えないし、むしろ怪しい感じさえします。

それでも人が集まるのは、どこか人間的な温かみがあるのでしょうか。

道が狭いからぶつからないようにお互いに気遣い、お店の中から楽しい話し声が聞こえてきたり、みんなで同じ街にいる一体感を感じることができます。これもヒューマンスケールで出来ている街と言ってもよいかもしれません。

ゴールデン街は最近のように一斉に開発されたのではなく、少しずつ手を加え、徐々に今の姿に落ち着いたのです。このスケール感や雰囲気は今の法律では実現できません。道幅を広げたり、防火性能を高めたり…人の命と安全を考えると、本当に悩ましいところです。

以前、大学の恩師と話したことがあります。

いまの街づくりがつまらないのは、街に溜まっていた澱(おり)が無くなったからではないかと。

人が暮らす街には、綺麗なものだけではなくて、当然その陰にある澱(おり)が存在してバランスをとっていたのだと思います。その澱(おり)のような場所に人は本能的に魅力を感じているのかもしれません。

木下治仁

一級建築士/合同会社HKA 代表

1975年鹿児島県生まれ。田中敏溥建築設計事務所に13年間勤務し、2016年に独立、2024年に合同会社HKAを設立。東京・代々木を拠点に、木造注文住宅・古民家再生・リフォームの設計監理を手がける。ウッドデザイン賞2度、木の建築賞 職人のチカラ賞受賞。

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